研究最終年度にあたる今年度は、2度の海外調査を実施した。2009年8月には中国の延辺朝鮮族自治州と韓国・ソウル市を訪問し、2010年1月には中国・北京市を訪問した。この訪問期間中、延辺大学、延世大学、清華大学、北京大学、中国共産党中央党校、中国社会科学院の関係者と当該研究テーマに関する意見交換をしたほか、研究関連資料の収集を実施した。日本国内でも論文・単著の執筆、学会やシンポジウムでの報告、学会でのセッション企画、ワークショップなどを通じて、研究成果の深化と対外的発信につとめた。 研究代表者の星野は中国・朝鮮半島の分析枠組として、先行研究で論じられてこなかった地政学とエスニシティの視点に着目し、中国をめぐる地政学的構造のなかに国境周縁部に広大な少数民族地域が分布している特徴を見出し、国境を超えるエスニシティの状況が中国の周辺国外交に与える影響を論じた。そしてこの構造を中国・北朝鮮国境に位置する延辺朝鮮族自治州と人類学的にみて韓国・北朝鮮と同一民族である朝鮮族の視点をとりこみ、中国・朝鮮半島関係研究に応用した。研究分担者の平岩は、とくに中国と北朝鮮の関係を建国60年という長期的な歴史スパンにたって分析し、それを単著にまとめあげた。中国・北朝鮮関係分析のなかに、中韓関係や南北関係といった韓国ファクターを意識的にとりこむことで、中国・朝鮮半島関係を中国・北朝鮮・韓国の三者関係として分析する研究枠組を歴史分析のなかから提示した。
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