研究課題/領域番号 |
19510257
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
赤嶺 淳 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 准教授 (90336701)
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研究分担者 |
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
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キーワード | 稀少生態資源 / エコポリティクス / 境域世界 / CITES / サマ・バジャウ / グローバル・コモンズ / 同時代性 / 人口移動 |
研究概要 |
日本とインドネシア、マレーシアの境域世界において「希少生態資源利用の動態と人口移動」に関する臨地研究を実施するとともに、代表者の赤嶺は、「希少生態資源の保全とめぐるエコポリティクス」の実態調査として国連食糧農業機関(FAO)やワシントン条約(CITES)事務局が主催したサメとナマコの持続的利用に関するワークショップに参加し、エコポリティクスが生起する現場の参与観察をおこなった。野生生物保全に関しては、これまでも利用か保護かをめぐり、さまざまな議論がかわされてきた。しかし、昨今では、動物福祉や動物権思想にもとづく動物保護の立場からの発言が政治力を増しており、科学的見地にもとづく資源管理をも否定しかねない傾向にある。こうした状況を招く一因としては、これらの資源管理を検証する国際機関や国際条約の会合に、さまざまな思想背景をもつNGOがオブザーバーとして参加し、かれらの主張を積極的に発言することが指摘できる。たしかに国際政治課題ともいえる稀少生態資源利用に関する会議へのNGOの参加自体は、政策決定プロセスの民主化ともいえ、評価すべきことである。しかし、ゾウやクジラ、サメをはじめとした大型野生動物の管理に関する議論においては、あいまいなデータにもとづく発言をくりかえしたり、科学的冷静さをうしなった議論を展開したりするNGOも少なからず存在し、効率的な議事運営の障害ともなりうる点が問題視されてもいる。たとえば、CITESが成立した1970年代初頭とはことなり、近年の保全生態学では、野生生物保全にとっての脅威は、同条約が想定する国際貿易ではなく、むしろ生息地の破壊・崩壊とされている。この見地に立った場合、動物権思想にもとつくNGOの議論はもとより、CITESでの科学論争自体に意味をみいだせない、という科学者もいるほどである。今後は、資源利用者の経験にもとつく、個別生態系の把握やそれらの資源利用者の文化・生活も包摂する生態資源の持続性を模索することがもとめられるし、そういった社会環境を国際的に創造していくことが必要となる。
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