平成19年4月〜7月には、これまで南タイ、東北タイで収集した聞き取りデータの中での「女性グループの意義・類型」「女性の役割」に関する言説の分析を実施した。グループは組織面での特徴別に「官僚組織型」と「起業・企業型」に大分でき、活動の意義については、1、出身村を離れずに自由な時間帯で収入を獲得、2、相互扶助の場をつくる、3、伝統的技能の復興・維持、4、地域産業の活性化、5、女性の政治参加促進、6、女性の自己実現という6項目が見出された。さらに、1、リーダーの負担が大きすぎること、2、外部への依存が大きすぎること、3、現地調達材料を活かしていないことが課題として挙げられる。これら関して、国際ジェンダー学会「開発とジェンダー」分科会の月例研究会、および、平成18〜20年度科学研究費基盤研究(B)「ローカルセンシティブな『ジェンダーと開発』研究の構築をめざして」(研究分担者として参加)の研究会(7月)、日本文化人類学会(6月)で報告した。 平成19年8月には、北部タイにおける農村女性グループに関する調査を実施し、チェンマイ大学で資料収集を行った。調査実施グループは、チェンマイ県で4か所、チェンライ県で1か所、ラムパーン県で2か所、ラムプーン県で1か所である。この調査の結果、上記の類型・意義・課題について再確認するとともに以下のような事実が確認された。すなわち、農村女性グループをアクティブにする要因には、特に女性たちの間に、現金の需要に関する認識の高まりがある。山間部にあって市街地との移動が不便で、食糧自給度の高い少数民族の居住地では、工芸品などの生産物があっても販売を組織化する動きは低調であった。さらに、農村女性グループの活動には、グループの存在する地域の政治的、社会的な状況がグループの活動に深く影響を与えている。
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