本研究の課題は、1) 今後4年間の韓国(朝鮮半島)政治変動の過程における大衆的な歴史認識(論争)と文化の動向を追いかけながら、それと同時に 2) 解放直後と朝鮮戦争以来、朝鮮半島における歴史認識の変容および、その東アジア的な関連性を調べることにあった。本研究の2010年度の研究計画は、(1)2000年以降の調査を総合的にまとめて、現代韓国の大衆文化における歴史認識(論争)について論文を作成する。(2)冷戦時代における韓国・台湾の歴史認識(過去清算、世界観など)についてインタビューし、報告書を作成することであった。 そのため、4月から7月までの間に出張し、東アジアの秩序や歴史認識をテーマとした研究会に参加してきた。具体的にはそれぞれ、京都では「東アジアにおけるトランス・ナショナル人文学の可能性」を、東京では「映像で結ぶ公共圏とアジア」「拉致と日韓併合100年-いま、どのような対話が可能か?」を、韓国では「韓国人の日本認識100年」「Re-visioning Korean History from a Long-term and Large-scale Perspective」をテーマとする会議であった。これらの会議を通じて、1945年以後、日韓の研究者・大学生らの間に、政治・思想的な立場、かつ世代的な経験により、その歴史認識・秩序認識の在り方に明らかな差異と亀裂があることに気がついた。今後、この問題意識を発展させて、1945年以後の東アジアの秩序変動にかかわる日韓の歴史認識、大衆文化の基底にある思想的な連関関係・政治的な対立/交錯の関係などを究明していきたい。 突然の帰国(ソウル大学の日本研究所に移動)により、科研における本研究を中止せざるをえないが、「東アジアの秩序と関わりあう、日本と韓国の歴史認識・論争および大衆文化」について、そのトランス・ナショナルな関連性を研究しつづけたいと思う。
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