研究概要 |
本研究は,沖縄における戦後の社会変動と宗教的意識の動態について,民俗学的視点から解明することを目的する。そのため,最南西部のいわば周辺都市である石垣市,及び八重山諸島を調査地として,村落祭祀と祭祀担当者の現状と動態について,政治、経済的変化,その影響とを合わせて考察していく。具体的には,現地でのフィールドワークをもとに,村落祭祀と女性司祭者に注目し,その役割、機能,輩出原理,就任過程などを,社会変動との関わりにおいて考察していく。 昨年度は調査計画に基づき石垣市の四箇(新川,石垣,大川,登野城)と呼ばれる中心地,及び波照間島(竹富町)などにおいて,豊年祭(石垣),盆のアンガマー(石垣),ムシャーマ(波照間)という村落祭祀の参与観察調査を行なった。石垣市の四箇はそれぞれ字ごとにある聖地としての御嶽を中核とした個別の豊年祭を遂行するとともに,四箇全体としての豊年祭が宗教的連関のもと開催されていることが明らかになった。 あわせて,村落祭祀を執行する石垣市と竹富島(竹富町)の女性司祭者であるツカサにインタビュー調査を行なった。そこでは,石垣市の各字にある御嶽とツカサの役割分担,ツカサの継承の経緯,シャーマン的資質と宗教的世界観が明らかになった。また,ツカサ同士の宗教的世界観の相違,輩出に関わるコンフリクトを見出すことが出来た。さらには,ツカサとユタと呼ばれる個人的祭祀の依頼を受けるシャーマンとの接点も見出した。 石垣市の祭祀と司祭者の在り方は,旧士族が政治、経済の中心であった時代である近世期までその姿を追うことが出来る。今日における村落祭祀とツカサの宗教的意識は近世期から連続するものと,社会変動による動態が予測出来る。本年度は,歴史的経緯に留意しながら,引き続きインタビュー調査,村落祭祀の参与観察,あわせて文献他の資料収集を行ない,分析を試みていきたい。
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