本研究は、1世紀半におよぶ近代エジプトの議会の変遷について、議事録を分析して明らかにするものであるが、本年度においては、おおまかに別けてイスマーイール期、イギリス占領期、立憲君主制期、軍事政権期の4つの時期に区分できる近代エジプト議会のすべての時代の議事録のサンプルを日本国内とエジプトにおいて入手することができた。これによって、議事録の編集の方法や構成の比較が可能となり、大まかに見て、時代が下るにつれ議事録編纂の手法は前時代の方法や技術が踏襲されて、さらに発展したことが明らかとなった。しかし、部分的な例外もあり、立憲君主制期のきわめて精緻な索引の技術は軍事政権下の議会には踏襲されていないことも判明した。来年度は、これらの議事録について、多角的に比較検討するため、比較事項を綿密に規定し、実際の比較作業を行なうことが必要となる。 議会と政治権力との関係の解明については、その一つの手がかりとして、各時代の議会法を比較することが有効と考えた。各時代の議会法については、議事録の付録や法令集などに掲載されており、国内とエジプトにおいて収集にあたり、本年中に各時代の議会法をほぼ入手することができた。これらの議会法で規定されている議会の権限のうち、とくに立法権、政府統制権、予算決定権についてそれぞれの議会法の規定の分析を始めた。さらにそれらの権限について、各時代の議事録を使って実際の運用を検証することが今後の課題となる。
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