近代日本の男性性構築過程のなかでも、兵士的男性性(国家への忠誠や女子どもの保護を、男らしさの中核と考える)に注目し、兵士的男性性の構築に<女性>エージェンシーがどのようにかかわったのかを明らかにする本研究プロジェクトのうち、平成19年度においては以下の作業を行なった。 (1)新中間層の<女性>エージェンシーにおける超階級的な「国民感情」の形成と、兵士的男性性の構築の関連性についての仮説を構築するために、『愛国婦人』の言説分析を、日露戦争期から大正期発刊分について行なった。 (2)植民地事業への何らかの参画者であった<女性>エージェンシーと兵士的男性性の構築との関連性を明らかにするために、開拓プロパガンダ雑誌として『拓け満蒙』(のち『新満州』)を取り上げ、そこにおいて展開された男性性をめぐる言説の抽出・分析を行った。とりわけ超階級的な「国民感情」の形成に着目し、(1)の作業において得られた仮説との比較対照を行なった。また、当該雑誌の発刊当時(昭和11年〜14年)の言説空間の布置状況を、先行研究に依拠しつつ整理した。 (3)John Toshらイギリスの男性史研究を中心に、男性性の<再編>についてのすぐれた考察を示している欧米の男性性研究の知見を検討し、(1)(2)および今後の分析作業における、理論枠組みの検討を行なった。またその成果を、『ジェンダー史学』(2007年10月)に執筆した研究改題、等において公開した。
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