平成20年度は、『愛国婦人』分析をはじめとする、都市新中間層女性の男性性言説に対する分析を平成19年度に引き続いて行うとともに、『拓け満蒙』などの開拓プロバガンダ雑誌の分析に着手し、内地都市と植民地という地理的・社会的条件の違いをふまえつつ、比較検討を行った。『拓け満蒙』においては、で女性による男性性言説と同時に、男性による男性性言説もまた収録されており、「大陸の新家庭」における男性性構築をめぐる、女性と男性との共闘・共謀と対立の相克する関係性を同一資料内で明らかにすることができた。この点において『愛国婦人』など都市女性を読者層に設定した雑誌においては、女性と男性との対立関係が同一資料内で必ずしも明確に明らかにできないため、都市俸給生活者男性を読者層に明確に設定した雑誌『サラリーマン』の分析にも着手し、そこたみられるミソジニーと都市男性の男性性構築との関係性を明らかにする作業を、来年度以降にも継続して行う。 他方で、植民地事業と男性性構築に関する海外の研究成果を検討した。その結果、この分野における研究蓄積がイギリスにおいて充実していることが明ちかになったため、当該地域での研究蓄積を中心に、来年度以降も引き続き成果の収集にあたることとし、平成20年度はその準備作業を行った。
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