本研究では、ドイツ近代における労働運動のなかで、男性性・女性性が構築されるプロセスを、当時の労働をめぐるジェンダー状況と関連させながら考察した。男女が競合するようになると、女性は家庭という言説が登場し、労働運動や労働から女性を排除したり、男性的性格をもたせようという傾向が強まることが明らかになった。これは、社会主義系の労働運動だけではなく、右派ナショナリズム系の職業団体にも当てはまることで、後者は反フェミニズ運動で大きな役割を演じる。女性労働に敵対的でない勢力や、女性運動の側でも、ジェンダー的視点をもたずに、もっぱら階級の観点が強調されるため、資本による女性労働搾取に反対するために、結果的に女性が「弱者」として構築されたり、「家庭の崩壊」が指摘されたりすることになるプロセスも明らかにした。
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