ドメスティック・バイオレンス(以下DV)防止は、ジェンダー平等政策パッケージの重要な-項目である。韓国では1997年、日本では2001年にDV防止法が成立した。どちらも女性団体や現場に関わる専門家の、政策形成過程への本格的な関与無しには成立し得ない法律であった。女性団体等NGOの関与が法制定に不可欠であった点は共通であるが、両国の歴史的経緯の違い、政治制度・政治文化の違い等々により、市民団体のあり方は相当に違ったものであった。本研究では行政課題の多様化・複雑化に対応する政策過程のあり方を探るという問題意識から、両国の女性団体を始めとするNGOの性格行政との協働等について調査・分析を行っている。19年度は資料・文献研究の他ソウルと近隣地方都市スーオンにおいて、NGO活動家、NGO研究者、女性省官僚を対象としてインタビュー調査を行った。DV被害者支援団体「女性の電話」スーオン支部では、現在DV相談業務とDV防止のための運動との分離など活動の改変が求められていること、地方組織や現場では依然として活発な被害者支援が行われ、それらとDV防止運動・政策提言が不可分な形で動いていること、などが明らかになった。またNGO研究者の間では、保守派大統領の下で、民主化以後最近まで行われていたNGOの政策への強力な参画は継続することができない状況で、NGO側では、今後の政府との関係のあり方が模索されていることが明らかにされた。女性省では、これまでの女性NGOとの関係が全面的に見直され、保守的女性団体が協働相手として浮上していることが明らかになった。しかし国際的な状況からジェンダー平等政策はあともどりできない問題であるため、今後の政府の対応が注目される。20年度はひきつづきNGOと政府関係、地方・中央の関係を、政策プロセスに焦点を合わせ、資料調査とインタビュー調査を行っていきたい。
|