研究概要 |
今年度は主に18世紀ヨーロッパのアカデミーに関する基礎資料のまとめと,ロシア帝国のペテルスブルグ、アカデミーにおけるダーシュコヴァ夫人の役割について調査した。そこで判明したのは,18世紀の前半にはヨーロッパでは少数だった科学アカデミーが,後半に地方アカデミーおよび新大陸のアカデミーを数えると驚くほどの多数にのぼり,雑誌などさまざまなコミュニケーション方法でおたがいの連絡を取り合っているということだった。しかし女性は正式にはほとんど参加しておらず,その足跡を追うの非常に困難であることも判明した。それがロシア科学アカデミー長官のダーシュコヴァ夫人であり,20世紀後半以降を除くとこ,歴史上惟一人の科学アカデミーの女性をつとめた人物である。この女性は他にも多くのアカデミーの名誉会員になっており,18世紀において特筆すべき存在であったことがわかった。次年度も引き続きこの女性の足跡を追うつもりである。 具体的な成果としては,ボローニャ、アガデミー会員であったデュ・シャトレ夫人の最後の作品である『プリンキピア』仏訳・注釈執筆時におけるジェンダー問題の欧文論文を出版した。また,アメリカの出版社から出た善8巻『新・科学者伝記辞典』に,パリ、アカデミーの重鎮であったラヴワジエの妻,ラヴワジエ夫人に関する項自をジェンダーの視点から執筆したものを出版した。
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