本研究の目的は、日本において近代的なジェンダー秩序の成立におけるマスメディアの機能を、戦前の大衆婦人雑誌を素材として明らかにすることである。詳細な分析をおこなうために、研究期間を通じて、公的図書館に完全な保存をみない大衆婦人雑誌と通俗小説などの古書史料を収集し確保に努めた。それらの史料をもとに、誌面構成分析・テキストにあらわれた価値観に関する意味論的分析、グラフィック情報分析・実用記事の数量的分析・連載小説の物語構造分析など、多面的な内容分析(content analysis) をおこなうことにより、近代初期の婦人雑誌が有していたジェンダー形成に関わる社会的機能の全体像を明らかにした。また、婦人雑誌の作り手の関係者および読み手にインタビュー調査によって、誌面分析の結果を、作り手と読み手の相互作用という現実に即して解釈すべく、考察した。
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