宮崎は、日本植民地期台湾における植民者と被植民者(台湾人)間の通婚の制度と実態について、台湾で主として文献調査を行なった(平成20年9月)。これにより先行研究を渉猟し、台湾法学界で台湾人の旧慣と新たな法制度とのすり合わせについて行われた議論や通婚に関する言説を概観した。連携研究者3名については、以下の通りである。 吉田は、主に国内に所蔵されている資料の収集を行なった。とりわけ、台湾総督府や拓務省といった機関により戦前に刊行された東南アジア諸地域の法制資料を研究所や大学図書館等を訪ね、確認してきた、そのなかでも、通婚/雑婚を確定する身分法的基盤となる民法の規定、国籍に関する調査を行い、調査成果の一部は論文として公表した。 松沼は、前年度に進めた先行研究のレビューに基づき、フランス植民地法判例集を主たる史料として、インドシナを中心とする植民地の混血に関する判例と学説および1920年代以降の法整備を検討し、その成果を論文にまとめて発表した。平成21年2月にはフランスで、20世紀前半の学術書と植民地省の公文書、および植民地関連の有力学術団体であった植民地科学アカデミーのアルシーヴを調査した。 上杉は前年度より引き続き、英国陸軍グルカ兵の婚姻に関する研究を行った。特に重点を置いたのが、グルカ兵の市民権と婚姻地位の取り扱い、外国人との婚姻に関する英軍の政策などである。平成20年8月には英国にて文献の収集や関係者へのインタビューなどを実施した。また、比較研究と理論整備のために、傭兵や民間軍事会社、市民権、越境社会空間等についての文献研究を行った。平成21年2月にはその成果の一部を研究会などで発表した。
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