研究課題
クィア・スタディーズは、1990年代、セクシュアリティとジェンダー研究における新たな分析視角として、さまざまな学者の批判的かつ批評的な分析を通して登場した。しかしながら、英米をはじめとする英語圏を中心に発達したために、1990年代半ばに増加したクィア・スタディーズにおけるアジアに関する研究に対しては、日本をはじめとするアジア地域の文化・社会に根ざした理論および実証研究の展開としては不十分であるとの指摘がなされるようになった。こうした背景の中、平成19年度~21年度の3年間にわたり、英米起源のクィア・スタディーズを日本の文化・社会に適用できるのか、それが可能である場合の方向性を明らかにするための研究を進めてきた。具体的には、欧米との比較の枠を超えたアジア間比較の重要性、同性婚における戸籍制度との関係、男女間経済格差のレズビアン・カップルの仕事と経済に及ぼす影響、生物医学の枠組みにおける性同一性障害としての性別越境の解釈、男性同性愛の肯定における男色表象、クィアの生活構造に影響を及ぼす地域性、女性差別撤廃条約におけるレズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダー女性の権利の位置等の視点から研究を進め、日本におけるクィア・スタディーズの可能性を考察してきた。その結果、「日本」の文脈においてクィア・スタディーズを展開していくに当たっては、近代化におけるジェンダー/セクシュアリティの構造化という点で英米と重なりつつも、英米とは異なる展開の可能性のあることが明らかになった。すなわち、セクシュアリティおよびジェンダーが階層・階級、人種・民族、地域、国籍といった軸と交差しながら存在しているとの視座から研究を進めていくことが、「日本」におけるクィア・スタディーズの可能性として確認された。
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