1)資料収集について本年度は、カナダにおいて、フリージャーナリストとして、『カナダのセクシュアル・マイノリティたち-人権を求めつづけて』(教育資料出版会、2005年)を執筆した、サンダース・宮松敬子さんに研究協力をお願いし、彼女が収集した資料を受け取ることができた。また、セクシュアル・マイノリティの権利、家族に関する資料収集に努めた。 2)同性婚に関する研究については、同性愛者たちが近代家族の枠組みに自ら囚われることをなぜ望むのか、あるいは、そもそも家族という制度が21世紀にも必要なのかといった、同性愛者当事者たちの問でも論争を生んでいる議論について考察を深めた。そのなかで明らかにしたのは、ひとは他者のケアなしには、一人の人間と「なる」ことはなく、全てのひとは、かつて他者からのケアを受け、また生涯にわたり、ケアされる・する関係性を続けていくことを考えれば、生死に関わるニーズを他者と分有し、満たしあう関係性は、すべてのひとに保障されるべき関係性である、という点である。そこで、そうした関係性こそが、わたしたちが互いに誰かを必要としつつ生きる基盤となる「家族」といえるのではないか、という提案を行った。その意味で本年度は、同性婚を求めるひとびとの言説とケアの倫理とを架橋することで、国民国家を支える道徳的聖域としての家族制度とは異なる、新たな「家族」像を探求する端緒を掴んだといえよう。
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