本研究は、セクシュアル・マイノリティの権利論・運動論と、フェミニズム理論におけるケアの倫理から考える家族論の架橋をめざし、そこから規範的な家族論を構築することを目的としており、本年度は、昨年度収集した資料・文献に基づき、「家族」に対する理論的探求を試みる計画であった。 今年度の研究成果で示したように、フェミニズム理論における制度的家族批判を踏まえつつ、「ケアの倫理」を経由することで、国家に回収されない新しい〈家族〉像を「家族のことば/家族の時間」において提起することができた。また、予定していたとおり、スペイン・マドリッドにおける世界女性会議にも参加し、スペインにおける同性愛者運動・同性婚を求める運動について、パネルに参加することができ、人々がなぜ、「家族」を求めているのか、また、同性婚に強く世論が反対する合衆国との違いについて、考察することが可能となった。その点については、同性愛者たちが、自分たちを排除・抑圧した「家族」をなぜ求めるかをめぐる考察として、「「女から生まれる--「家族」からの解放/「ファミリー」の解放」として発表することができた。規範的な家族論を批判しつつ、新しい家族概念の模索という点については、「家族のことば・家族の時間」において展開できた。
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