本研究は本研究は、セクシュアル・マイノリティの権利論・運動論と、フェミニズム理論におけるケアの倫理から考える家族論の架橋をめざし、そこから規範的な家族論を構築することを目的としている。 内容:平成21年度は、フェミニズム理論内におけるケアの倫理に焦点をあてつつ、家族の規範的な意義、すなわち、具体的な個人と他者の関係性において、諸個人の文脈に応じた個別具体的なニーズに応答するさいの倫理を抽出することに努めた。 意義:日本におけるフェミニズム理論研究は、70年代以降のウーマン・リブの運動を経て、80年代に理論化が始まって以来、社会的政治的制度としての「家族」は、女性を抑圧し、女性の公的領域における活動力、そして自由を阻害してきたとして批判にさらされてきた。本年度申請者の研究においては、歴史的に女性たちを抑圧してきた制度としての家族の否定的側面に十分な配慮をしつつもなお、家族的な営み・親密圏における実践から、非暴力的な他者への応答のための倫理を抽出し得たことに意義がある。 重要性:本研究は、規範的家族に見いだされる倫理から、政治思想史を貫く公私二元論、さらには、主権国家の暴力性を照射し、新しい社会構築の基盤を模索する点で、これまでない、フェミニズム理論の可能性を提起している。
|