ひとり親家族の生活史を持つ大学生に対して、ライフヒストリー・インタビューをすることで、これまでのひとり親家族の生活をどのように捉えているかを明らかにした。研究方法は、対話的構築主義アプローチのライフヒストリー研究とした。聞き手は研究者が個別に面会しインタビューを行い、インタビューはICレコーダーに記録し、その後各自で文字起こしを行ったものを3人で共有し解釈を行った。 その結果、ひとり親家族で育った大学生は周囲からの差別的イメージを持たれていると感じており、そのような差別イメージに立ち向かう心の支えは友人や教師であることがわかった。またひとり親家族の大学生が語る未来の家庭のイメージは、「普通の家庭」という言葉で表わされているが、その普通のイメージは語り手ごとの生活史に基づき多様なイメージが構築されている。ひとり親家族の場合、親と子が密着したイメージを築くとされがちだが、今回の語り手である子の立場からは、必ずしもひとり親の経験が親と子を密接に結びつけることにはなってなかった。また複数の語り手から、今は築けている安定やしあわせが大事でその安定やしあわせを失いたくない、守りたいという気持ちが切実に感じられた。 このようなインタビュー調査の結果からは、ひとり親家族庭の子どもを精神的にサポートする複数の体制が必要であることが見えてきた。公的な支援としては小・中・高の教員のカウンセリングマインドをさらに高める教職課程教育や学校カウンセラーの常置が必要であろう。 研究成果報告書を200部作成した。主として、その内容は、日本におけるひとり親家族に関する先行研究および韓国におけるひとり親に関する先行研究の検討結果を記載した。また日韓アンケート調査の単純集計項目の韓日比較を行った。特に韓国と日本で顕著な差がみられたのは、「ひとり親家族と子ども」に関してのイメージ、大学生自身の「ひとり親家族と子ども」に関してのイメージ、「ひとう親家族の子育て」に関する世間のイメージ、「ひとり親家族の子育て」に関する大学生自身のイメージであった。また大学で「家族についての講義」を受けた者は日本に多く、韓国ではその半分であった。同様に「男女共同参画」についての講義に関しても韓国のほうが受講経験者が少なかった。
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