地球システム統合モデルを用いた地球温暖化予測を行うにあたって、陸域生物圏モデルは不確定性が高いサブモデルの一つであると考えられている。本研究では、衛星データを用いて陸域地表面物理量を算出し、これを用いて陸域生物圏モデルをできるだけ客観的に向上させるためのフレームワークを構築することを目標としている。本年度は北アメリカ大陸を対象にして雪モデル、水循環モデル、光合成モデルまでを最適化手法を用いて客観的に向上させる手順を構築した。まず、Terra/MODISデ-タと地上観測データの双方を用いることによって、衛星データから蒸発散量や光合成量を過去約5年間において推定した。次に、陸域生物圏モデル(Biome-BGC)の構造を解析し、より独立性の高いサブモデルを順に最適化することによって、陸域生物圏モデル向上のフレームワークを構築した。これらのデータとフレームワークを用いてモデル最適化を行うことによって、モデルは飛躍的な向上を見せた。雪モデルに関しては、雪の季節の長さの再現性を向上させるのみでなく、蒸発散や光合成の季節変動にも影響を与えた。水循環モデルについては、モデル向上によって、蒸発散量の季節変動に大きなインパクトを与えた。特に乾季の長い地域においては、より深いRootingDepthが推定され、これが蒸発散や光合成量等の季節変化に大きな改善をもたらした。光合成モデルについては、光利用効率などの生態系パラメータを求めることができ、モデル自体も衛星から得られた光合成量をより再現できるようになった。このモデル改善手法を適用した陸域生物圏モデルを用いることによって、将来予測結果が変動する可能性が考えられる。
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