本研究は1990年代以降に急速に台頭しているミャンマーの華僑・華人実業家の基礎的研究を行うことを目的としている。本年度の成果は以下のようものである。 まず、東南アジアの華僑・華人に関する先行研究の検討および研究者との意見交換を行い、ミャンマーとの共通点、相違点について明確にしたうえで、調査計画を再検討した。その結果、華人実業家に焦点をしぼる前に、1990年代からの自由主義経済体制への移行と実業家の台頭という全体的な構図を把握することが重要との認識にいたった。そこで、代表者はそのためのひとつの手段として比較の視点を取り入れるため、ミャンマー同様、華僑・華人の経済進出がめざましいカンボジアとベトナムで短期のフィールドワークを行った。両国(特にカンボジア)における中国化の波は、ミャンマーのそれと比べるとはるかに大規模かつ急速であり、さまざまな知見を得ることができた。次いで、すでにミャンマーで収集を済ませていた中国関連文献を検討した。多くの文献があるなかで、ミャンマーの第2の都市であるマンダレーの人口について調査した博士論文は、昨今の華人系住民の動きを考えるうえで非常に重要な発見となった。 以上のような研究成果に基づいて、今年度は他の東南アジア諸国との比較をすすめながら、同時にミャンマーでの本格的な調査を開始する予定である。
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