中国の台頭によって東アジアと東南アジアの地域秩序はどのように変化するのか。各国の国内政治経済への影響はどういったものとなるのか。こうした問いは今後数十年にわたって議論されるだろう。そのなかでミャンマーに起きている変化は大変興味深い。ミャンマー政治経済は学術的にも一般的にも民主化をめぐって論じられることが多く、また、経済は自由経済体制への移行の最中にある国として論じられてきた。しかし、1990年代以降、それとは別のかたちで非常に重要な変化が起こっている。民間経済部門の発達と、隣国である中国の経済発展とが結びつき、ミャンマー国内に多くの華人・華僑実業家が台頭しているのである。本研究はミャンマーにおける華僑・華人実業家の政治経済的影響力を、民間企業の所有形態分析および国軍将校と企業経営の関係などに焦点をあてて明らかにし、それを通して1990年代以降のミャンマー政治経済の変容を、中国台頭による東南アジアの変化のなかに位置づけることを目的とする。
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