研究3年度となる今年度は、9月と3月に定例の研究会を開き、従来どおり研究代表者と連携研究者、研究協力者がそれぞれの専門的知見を持ち寄りつつ、『源氏物語』を読み進めていった。その結果、光源氏の物語の末尾近く「柏木」巻まで検討することができ、順調なペースで研究が進められていると言える。次年度の夏の研究会で、「幻」巻まで読み終える計画となっている。 また、次年度が研究最終年度となるため、研究成果となる論文を発表する場を検討した結果、研究代表者が責任編集を担い、雑誌『季刊日本思想史』(ぺりかん社)に『源氏物語』特集号を組むことが、担当編集者との相談の上、決定した。同誌の既刊分の第75号までに『源氏物語』の特集号はなかったため、日本思想史研究としても新局面を開く意義深い取り組みになることが予想される。現在、紙幅の都合もあり、執筆者とテーマを選定中であるが、研究代表者・連携研究者・研究協力者の大半が寄稿することになる。刊行は、同誌の他の特集号との兼ね合いで、23年初夏を予定している。22年度末ごろに、各自が論文の初稿を持ち寄り、相互に議論検討した上で、論文化する計画である。 研究代表者個人の研究においては、日本倫理思想史の方法論の一環として和辻哲郎『日本倫理思想史』の分析を進めており、平成22年度中に成果を公刊できる見通しが立った。また、荻生徂徠の天の概念に関する論文一本を、所属機関発行の紀要に寄稿したが、これは本研究が課題とする人間存在の分析と表裏をなす超越観念の問題を論じたものである。
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