研究概要 |
まず、実体様相論理に関しては、分類命題・傾向命題・生起命題に原子命題を分類する種的様相論理と同様に、時間様相論理においても、原子命題そのものを、実体の必然的、可能的、現実的持続にそれぞれ対応する完了(過去)命題・展望(未来)命題・進行(現在)命題という三種類に分類することが妥当がどうかを検討し、結果として肯定的な見通しを得た。そのうえで、両者の平行性がどの程度まで成立するのかということについて検討した結果、「人間ほ動物である」などの種どうしの実例化関係に対応する時間様相的原子命題は存在しないこと、命題様相的に可能な完了命題が進行命題によって含意されるこ之を表す時間様相的公理に対応する種的様相的公理は認められないこと、および、これらの原子様相的区別を反映する内包的命題様相論理の体系は、実体の本質の絶対性に由来する種的様相論理においてはアリストテレス的S5であるのに対し、本来的方向性を有する実体的持続に由来する時間様相論理においてはディオドロス的S4.3等であること、という三つを除いては、必要な調整を施したうえでの平行性が両者の間で成立することを確認した。 また,実体主義的な存在論に関しては,著書『穴と境界-存在論的探究』の中で,全体的な通時的同一性を保つと考え得るという点で実体的性格を有するが,ある種の存在論的依存性を免れ得ないという点で完全な実体とは言えないという,穴と境界の存在諭的性格についての考察を行うことにより,実体的存在の限界点を見極めることを試みた。またそれと同時に,実体そのものにとっても,特に境界は,その独立性,統一性,接触可能性を成立させるうえで重要な役割を演じていることを主張した。
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