人間は、自らが何ものであって、宇宙進化の先端に立つことの意味は何であるか、に関心をもつところの生き物である。こうして人間は、一方では原初受動性に制限され(誰も生まれようと思って生まれたわけではない)、世界の偶然性に翻弄される。他方では個人として自らの活動でその存在を維持拡張しようとする。その個人と個人を超える宇宙脈絡の力のせめぎ合いがモイラ運命であることを明らかにし、「汝自らを知れ」という抽象の極みとも見える掟が具現遂行される現場がモイラ運命であったことを示した。そしてこれに基づいて具体例としてオイディプスの悲劇を解明した。
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