研究概要 |
本年度は、国内外の倫理学・応用倫理学および動物倫理関係の文献調査と考察を行った。応用倫理学の原論としての倫理学理論の見直しや、日本的な倫理のあり方についての職業倫理における応用については論文という形で研究成果を発表することができた。動物倫理に限って言えば、Kristine Korsgard, Martha Nussbaum, Rosalind Hursthouseら、英米倫理学を代表する倫理学者がそれぞれ異なった理論的アプローチで動物倫理について論じていることが判明したため、従来日本で紹介されてきた「動物の権利」運動の主張とこれらの理論家の立場の違いを分析した。この成果の一部は書籍という形での公表を準備中である。 動物倫理に関心を持つ国内外の研究者との交流としては、何よりも国際人と動物の関係学会(International Society for Anthrozoology)の年次大会に参加し、同分野の研究者と意見交換を行えたことが大きい。また、実践・専門職倫理学会(Association for Practical and Professional Ethics)の年次大会においても動物倫理に関心を持つ研究者との意見交換を行うことができた。 歴史文献調査においては、東京大学・同志社大学・横浜開港資料館等での文献調査を行った結果、戦前動物愛護運動の運動内容の大枠はほぼつかむことができ、詳細な年表の作成を開始した。また、「動物虐待防止」に代わって「動物愛護」という言葉が使われ始めた経緯についても調査し、動物愛護運動の性質が当初から欧米と日本で異なっていたのではないかという仮説への傍証を得ることができた。
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