研究課題
本研究は、西洋古代にまで遡って、現在「自然」と翻訳されている諸概念を原典に即して見直し、その後現代に至るまでの「自然」の意味の変遷をたどるとともに、それをインド、中国、日本の思想における「自然」理解と突き合わせながら、比較思想的に「自然」観の再検討を行うものである。本年度は、4月、6月、11月に三重大学において研究会を行い、それぞれ西洋現代哲学、西洋近代哲学、西洋古代哲学を専門とする研究分担者が執筆中の論文を検討した。また9月には、他大学の研究分担者も含めて研究合宿を行った。そこで各研究分担者がこれまでの研究の進行状況を報告し、その内容を参加者全員で討議するとともに、今後の予定を確認した。以上の研究会、研究合宿の成果を踏まえて、各分担者が論文を発表した。その主なものは次の通りである。秋元ひろとは、西洋古代から近代にかけて「自然法」の概念がどのように展開されてきたかを検討することを通して、各時代において「自然」と価値秩序がどのように捉えられていたかを明らかにした(「自然と世界の価値秩序」)。片倉望は、『老子』などの中国古代の文献において、「自然」は「自分自身で…する」という意味をもつにすぎず、日本語の「自然」とは意味合いが大きく異なることを示した(「中国古代における「自然」」)。なお、これらの論文をまとめ、論集『自然の探究』(片倉望編)の刊行までこぎ着けたことは、本年度の特筆すべき成果である。
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片倉望(編)『自然の探究」(三重大学出版会) (印刷中)
片倉望(編)『自然の探究』(三重大学出版会) (印刷中)
日本佛教学会年報 第73号
ページ: 181-191