研究課題
本研究は、西洋古代にまで遡って、現在「自然」と翻訳されている諸概念を原典に即して見直し、その後現代に至るまでの「自然」の意味の変遷をたどるとともに、それをインド、中国、日本の思想における「自然」理解と突き合わせながら、比較思想的に「自然」観の再検討を行うものである。研究の最終年度に当たる本年度は、4月、11月、1月の計3回、三重大学において研究会を行った。4月の研究会においては、日本思想の研究者が執筆した論文(「「おのずから」としての自然」)を検討した。この論文は、もともと「おのずからそうなるさま」を表すために主に副詞的に用いられていた「自然」という言葉が、時代が下るにつれて事物そのものを指すようになっていくプロセスを、テキストに即して跡づけようとしたものである。その「自然」理解が、仏教や中国思想における「自然」把握とどのように異なるのかを討議した。11月の研究会では、西洋近代哲学を専門とする研究者が執筆した論文を検討し、世界・自然を認識する際知性や感性はどのような役割を果たしているかを議論した。1月の研究会では、中国古代哲学の研究者が執筆した論文(『論衡』自然篇の「自然」)について検討し、『論衡』の著者王充において「自然」がどのように捉えられているか、またその、他の地域、時代における「自然」理解との異同を吟味した。また9月には東京大学において他大学に所属する研究者も交えて研究会を行った。そこでは、仏教学の研究者が執筆した論文(「『維摩経』における「自然」)を検討するとともに、これまでの研究の総括を行った。以上のように、本年度も前年度に引き続き、それぞれの時代、地域における「自然」やそれに関連する概念の特質を明らかにするべく努めた。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)
倫理学の地図(篠澤和久・馬渕浩二編)(ナカニシヤ出版)
ページ: 207-236
人文論叢 (三重大学人文学部文化学科) 27
ページ: 123-137
理想 683
ページ: 71-82