8月の世界哲学会議(ソウル大学)にて、本助成研究の一方の柱である「人間行動の適応主義的説明」の問題のための基礎研究として、「The Nature of Adaptationism」と題する、進化生物学における適応主義的方法論の問題に関する報告を英語で行った。 同じく8月に日本進化学会の年次大会(東京大学)における「哲学はなぜ進化学の問題となるのか」というテーマのワークショップの報告者として、「進化心理学の論理の批判的考察」と題する報告を行ない、日本の進化学のプロフェッショナルな研究者を前にして、進化心理学の方法論(進化的機能分析)に関する原理的な問題提起を行った。 11月には、私が準備組織委員会の一員としてその開催準備に取り組んできた国際生物学の歴史・哲学・社会学会のワークショップ(神戸大学)が開催された。私は「東アジアにおいて勃興しつつある生物学の哲学」というセッションのオーガナイザーを務め、かつ報告者として「Critical Examination of the Logic of Evolutionary Psychology」と題する(基本的に8月の進化学会の報告と同趣旨の)報告を行った。 原著論文としては、東海大学文明研究所で発行している機関誌『文明』に、「『新優生学』をどう考えるか」と題する論文を発表した。これは本助成研究の研究計画に直接関連するものではないが、2003年のヒトゲノムの解読完了以降浮上してきた社会的・倫理的諸問題について、生物学の哲学の観点から検討を行ったものである。 さらに、本助成研究のもう一方の柱である自然選択の単位の問題に関して、『生物科学』誌に「遺伝子選択主義をめぐる概念的問題」と題する論文を3月に提出したが、発刊は4月以降になるものと思われる。 さらには、「応募内容ファイル」にも書いた、慶応大学に提出する英文の博士論文をほぼ完成させた。4月中には提出する見込みである。
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