平成21年度前半は、平成20年度の研究の引き続きとして、「宇宙論的ミュートス」のグループに関する個別的問題について、レベル2の立場から考察を加える作業をおこなった。前年度の研究を発展させるかたちで、「終末論的ミュートス」の場合と同様に、プラトンの宇宙論の全体像や、その思想的影響関係を明らかにし、その成果をレベル1にフィードバックする作業を中心に、具体的には次の作業をおこなった。1.『政治家(ポリティコス)』における宇宙の周期と逆転を巡るミュートス(268d-274e)の詳細な構造分析をおこない、および対話の中心テーマ(政治家の定義)の議論の中でミュートスが果たす役割について考察した。2.『ティマイオス』において全面的に展開される宇宙論の構造分析をおこない、この作品の中で、ミュートスとロゴスの関係がいかに把握され、それが実際の議論の中でどのように分析できるかについて考察を加えた。3.『クリティアス』におけるアトランティス神話の分析をおこない、とりわけ、アトランティス神話が語られる意図について考察をおこなった。 平成21年度後半においては、まず、「終末論的ミュートス」と「宇宙論的ミュートス」の間の相互連関について考察し、両者の密接な関係を具体的に考察した。続いて、レベル3の問題を総合的に考察し、これまでの研究成果を前提に、本研究の最終的な目的である、プラトン哲学におけるロゴスとミュートスの複雑な関係性を立体的に浮き彫りにする作業をおこなった。
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