研究概要 |
本研究は、三つの点を研究目的にしている。第一は、人間存在そのものの「超越性」から出発して「共同善への運動」という観点からトマスの共同体論が有する現代的な意義を明らかにすることに基づく、神戸大学大学院経済学研究からの博士号取得と博士論文の出版、第二は、京都大学への博士論文を補完した拙著『トマス・アクィナスの人間論-個としての人間の超越性-』の英訳の実行、そして第三は、「トマス・アクィナスの幸福論研究」というさらなる博士論文の作成である。このうち、第一に関しては、幸いなことに平成20年度中に学位取得と出版を達成することができたが、22年度はさらにこの研究を第三の研究目的につなげるという仕方で展開させ、「個の幸福における連帯性-トマス・アクィナスの共同体論を手がかりに-」と「連帯性の人間論的根拠」という学会発表を行ない、後者では査読用の論文を提出した。また同様の目的から、「ペルソナと自然法-トマス・アクィナスにおけるペルソナの多元性をめぐって-」、「トマス・アクィナスにおける人間の宗教的超越性-経済主体の多元性-」という二本の査読付き論文が掲載された。第三の研究目的である新たな博士論文「共同体の再認識-トマス・アクィナスにおける共同体論の現代的意義-」に関しては、序に相当する「目的の個別性と普遍性-トマス・アクィナスの目的論に関する一考察-」を作成した。第二の英訳に関しては、本学英語科准教授であるGlenn Forbesから全面的な協力を受けて進められており、ほぼ完成に至っている。現在,海外での出版を目指して、情報を収集している。
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