ドイツ啓蒙主義哲学において蓋然性は事象の「可能性の度合い」を意味し、それは事象の完全性に応じて規定されるが、この完全性が「無矛盾性」に基づく「両立可能性」に応じて規定される限り、決定論の疑惑が払拭できないという困難が見出される。カントは論理学が判断や推理の一般的な規準を意味する「カノン」であるとする見地から、「蓋然性の論理学」を特殊な対象の認識方法である「オルガノン」であると見なして否定したが、その一方で数学的な蓋然性(確率)を認め、これを独自の哲学的原則によって基礎づけた。その判断の必然性は絶対的ではなく、部分的に経験に基づく「仮定的必然性」であり、この点においてドイツ啓蒙主義哲学に見いだされる決定論的な困難を回避したと言える。
|