今年度はまず昨年度からの継続で『書伝大全』の分析に従事し、その完了後に『礼記大全』が陳〓撰『礼記集説』をはじめ宋元の経学著作をどのように集成しているのかという問題について具体的に分析する作業を行った。この『礼記大全』についての分析は当初の予定より時間がかかり、そのため『四書大全』の研究に取りかかる時期がかなり遅れた。『四書大全』については、倪士毅撰『四書輯釈』との詳細な比較に焦点を絞って研究作業を進め、おおよその考察は終えたがまだ不十分であり、また『四書輯釈』以外の宋元の経学著作が『四書大全』にどの程度取り込まれているのかという問題についての考察も未完で次年度の課題として残った。平成19年度から購入を続けてきた『続修四庫全書』(経部)が全冊揃ったことから、これまでに行ってきた作業・分析を部分的に再検証していることもあり、当初の計画からすると研究は遅れ気味であるが、最終年度に研究を総括するための土台は整いつつある。 なお、本研究の主な目的は「永楽三大全」の内容の考察であるが、それに加えて明永楽年間以降の中国はもとより東アジア儒教文化圏の学術・思想の特質に関わる諸問題にも必要に応じて随時研究を広げることを目指している。本年度は、その一環として、「永楽三大全」が受験用のテキストに指定されていて、答案作成の際に実際に大全が使われていた明代の会試における答案審査の観点について考察を行った。その成果は、国際会議で発表し、また論文にまとめたものが海外の雑誌に掲載された。
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