研究課題
研究の目的では、中国の戦国から秦漢時代にかけての太陽とロータスと鳥の図像的イメージがエジプト起源の再生復活観念および不死の観念と強く結びついており、それが神仙思想の形成にも大きな影響を与えていることを論証したい、ということを述べた。本年度は扶桑について研究した。「中国の死生観に外国の図像が影響を与えた可能性について-馬王堆帛画を例として」では、馬王堆漢墓の帛画にみえる図像がエジプトあるいは北方の遊牧系の図像と関わりがあることを述べた。従来、馬王堆の帛画に関しては楚の地方の特異性といった観点から論じられていた。ところが、じつは西方や北方の文化の影響をも受けているようだ。馬王堆帛画にエジプト的要素と遊牧系要素が入っており、それが、その死生観をも規定するとすれば、以下のような仮説が提出できるだろう。馬王堆の帛画は、エジプトの死生観においてミイラが復活・再生することを願ったのと同様に被葬者が復活・再生することを願った圖ではないか。被葬者はエジプトの圖のように横向きに描かれ、龍の形の船に乗っているが、死者が船に乗って太陽神と共に地底である冥界を旅し、朝には若返って再生・復活することを願うというエジプトの考え方に似ている。馬王堆帛画も被葬者が下段の冥界を通り抜ける圖像ではないか。エジプトではバーと呼ばれる人面鳥がおり、これは魂をあらわし、太陽に入って復活再生する。馬王堆では一號漢墓に人面鳥がおり、バーの図像の影響があると思われる。赤く大きな太陽に描かれる黒い鳥もエジプトに類似の圖がある。これはバーの形のオシリスが復活・再生する圖として描かれている。先端が尖り基台のある二柱は形状的にオベリスクであろう。右の扶桑は蔓草状だが、パルメット状の花から太陽が生まれており、パルメットのもつ再生観念とも関わっているようだ。「『道・經』にみえる「精」と房中術-広成子・大成・容成等「成」のつく人物との関わりから」は『老子道徳経』の中の「精」と房中術の関係について考察したものである。とくに名前に「成」のつく人物が房中術と関連が深く、『道徳経』の中からうみだされてきた人物像ではないかということ述べている。
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人文学論集 26
ページ: 55-67
1-36雑誌, 東方宗教(雑誌), 日本道教学会 110(号)
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