本研究は戦国秦漢の太陽とロータスと鳥の図像的イメージが、エジプト起源の再生復活観念と結びついており、神仙思想の形成にも影響を与えたことを考察するものである。太陽は毎朝、新たに生まれ、永遠に繰り返す。ロータスは夜に花が水に沈み、翌朝、太陽が昇ると再び水中から顔を出す。エジプトでは再生復活の象徴である。今年度はロータスの図像の中国的展開として芝を考察した。仙薬は当初、「芝」だけであったが、初期の図像や文献をみればキノコではなく、むしろ、ロータスであり、その再生復活観念により不死の仙薬とされたようだ。パルメット(ロータス)形の芝の図像を画像石・画像磚等から集めた。また文献も探索した。この原稿はほぼ仕上っており、来年度、考古学関係の雑誌に投稿する。ほかに「鏡と太陽信仰」について考察した。エジプトの鏡は太陽の象徴だが、中国の鏡は、なぜか星と結びつけられている。けれども、形・文様・銘文を検討すると太陽と関連するものが多い。鏡もまた復活再生の象徴とされたのだろう。副葬されたことにも、本来、その意味があったと考えた。台湾で発表した原稿は整理しなおして『中国研究集刊』に投稿中である。人文研で発表した「房中術と陰陽」では、「陰陽不死と日月の循環」という項目で、『十問』の「陰陽不死」を、循環して死なない、という考えとして捉えた。陰陽は日月の循環と関わり、それらは大きくはエジプト的な太陽の復活再生観念を下敷きにしていると思われる.房中術は神仙思想の一部を構成しているが、「陰陽不死」という概念が、神仙思想の尸解仙などが生み出されていく思想的根拠となりうるのではないかと考えた。これは来年度に活字化の予定。「救日祭祀と十日神話」は、日食から太陽を救う儀礼である救日祭祀と、太陽が扶桑樹から生み出される十日神話について三星堆のものを中心に、花の図像、鳥の図像なども含めて考察した。
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