本研究の目的は、中国隋唐時代に建立された道観(道教寺院)について、文献史料のデータを集積し、この時代における道観の全体的な鳥傲図を作成することにある。具体的には、同時代史料である石刻史料を中心に、史書、地理書、地方志、宗教関係史料(道蔵・道観志など)から道観の史料を収集し、(1)道観の名称およびその変遷、(2)造営年代、(3)場所、(4)造営者、(5)規模、(6)居住道士、(7)付属施設、(8)その他の項目を立て、順次に整理してデータ化していきたい。それによって、どちらかと言えば道教の教義や国家との関わりを中心に論じられてきた階唐道教の当時の社会における実態を把握するための手がかりを得ることができよう。 昨年度は、同時代史料である石刻史料を中心に道観関係の史料を収集、データの集積を実施した。(1)『道家金石略』および『石刻史料叢刊』CD-ROMのデータベースによって基本的な道観史料を収集、データを作成した。(2)新出の石刻史料の墓誌および石碑の道観史料の収集に着手した。当初予想したより新出史料の数量が多いため、ほぼ半分近くを終了した。(3)研究代表者も参加していた基盤研究B「江南道教の研究」(代表:嚢谷邦夫)による研究成果報告書(2)として『江南地方志二十五種道教関係記事集成』が刊行された。明清時代に編纂された江南地方志の道教関係の記事を集積したもので、道観の記事も少なくない。このため、宋元時代の地方志に記載される道観史料の収集を明清時代のそれと照合しながら進めることとした。なお、当初計画していた道蔵および道観志の史料収集およびその分析・整理については、本年度に変更した。(4)宋元時代の地方志によれば、唐代では道観の名称の変遷がかなりみられ、国家の政策との関わりが深いため、項目について改めて検討することにした。
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