研究課題/領域番号 |
19520049
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉水 千鶴子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (10361297)
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研究分担者 |
佐久間 秀範 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (90225839)
小野 基 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 准教授 (00272120)
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キーワード | 中観思想 / 明句論 / チベット仏教 / 大乗仏教思想 / 仏教論理学 / チャンドラキールティ / シャン・タンサクパ / 離辺中観説 |
研究概要 |
平成19年度の研究実績として、研究代表者は次の三つの作業を研究協力にあったてくれる大学院生の助力を得て完了した。 1) 『中観明句論註釈』第1章9〜24フォリオ(全体の半分相当)の写本解読作業と校訂テキストの作成。 2) 同2章の写本解読作業と校訂テキストの作成。 3) 1) に基づく内容読解。 そこから得た知見は、以下の2点である。 1 『中観明句論註釈』の著者シャン・タンサクパ(12世紀)は、チャンドラキールティによる論理学的手法の批判を、離辺中観説の立場から解釈している。後代のチベット人に伝承された離辺中観説の原形をこのテキストに見ることができる。 2 彼自身は論理学的手法をまったく退けるのではなく、他者が用いる論理を利用して否定的な言明を導く論証を行なうことを認める。これはチベット仏教の初期からチャンドラキールティの中観思想体系に論理学が組み込まれていたことを示している。 1,2は、これまで資料の不足によって解明が不十分であった11〜12世紀のチベット仏教後伝期初期におけるインド仏教の受容のあり方と思想状況について新しい情報と理解をもたらし、その後のチベット中観思想の発展に与えた影響を明らかにしてくれるものである。
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