研究課題
平成21年度の研究実績として、研究代表者は次の三つの作業を研究協力者の助力を得て完了した。1)シャン・タンサクパ著『中観明句論註釈』第1章1~24フォリオの写本校訂テキストの作成と校正。このテキストは、チベット文字を用いた校訂テキストとして2011年度に出版予定で、その準備にとりかかっている。2)同書が註釈するチャンドラキールティ作『明句論』における論理学受容の再考察。3)2)に基づく研究発表を第14回国際サンスクリット学会(京都大学)で行った。内容は以下の通りである。『明句論』は論理学受容に否定的であると従来理解されてきた。しかしながら実際には著者チャッドラキールティは同時代(7世紀)のインドの論理学が用いる論証形式を認め、中観派もそれに従って他者の誤った見解を否定する論証を行っていることを示そうとしている。そこで要請される主題について中観派は対論者と共通認識をもちえないために、それは中観派自身にとって成立する主張命題をもった自立論証にはならないのである。それ故にチャンドラキールティは「中観派は自らの主張命題をもたない」と唱えたのであるが、それは中観派がまったく論理を用いない、という意味ではない。むしろ論理学の規則を遵守していると見るべきである。研究分担者佐久間教授は、瑜伽行派の系譜に新知見を加え、研究論文として発表した。小野准教授は、仏教論理学派のヒンドゥー教の学説批判を引き続き研究した。
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Logic in Earliest Classical India, Papers of the 12th World Sanskrit Conference held in Helsinki, Finland, 13-18 July 2003 10-2
ページ: 139-166
哲学・思想論集(筑波大学) 35
ページ: 164-198