研究課題
インド言語哲学における「意味論」、とりわけ「文」にかかわる「意味論」の特徴を、インド6世紀の思想家バルトリハリの主著『文章単語論』第二巻本文および自註の写本を用いて、そのテキスト分析を通じて明らかにすること。これが本研究の目的であった。今年度の実施計画とその成果は次の通りである。1) マラヤラム文字写本の写真を用いて、『文章単語論』第二巻の新たな校訂テキストを完成することを目指した。しかし校訂版として公表できるような形で完成することは出来なかった。マラヤラム文字写本の読解については、ウィーン大学の室屋安孝研究員(現在ライプチヒ大学)を招き、専門的な助言を得た。また、各種の写本の扱いについての知見を深めたが、テキスト校訂版の公表は今後のこととする。電子版研究ノートは、私家版としては完成し、以下のごとく、テキスト分析・読解研究に使った。2) テキストの読解研究を進め、バルトリハリの文章意味論の特質についての検討を完了することを目指した。これについては、「単語の意味と文の意味をめぐる議論(VP II. 44の周辺)」として論文にまとめた。概要は研究成果報告書に記した通りである。『文章単語論』第二章の本文の写本、自註の写本、本文の出版テキスト、自註の出版テキスト、注釈のテキスト、本文の解釈、諸注釈が示す解釈、これらの各レベルでのテキスト解釈に関わる議論を、他学派の論者の主張や批判も参照しながら、単語の意味と文の意味をめぐる議論の箇所を中心に読解し、検討した。写本の読み、出版本の読み、本文の理論的解釈について、インド言語哲学史上に新たな知見を提示することが出来たと考える。3) バルトリハリの文章意味論を、インド言語哲学史上に位置づける論考を成果として発表することを目指した。これについては、上記2)に示したものが、成果となる。主として、ミーマーンサー学派の唱えた文章意味論との比較で、バルトリハリの文章意味論の特質を、そこでは論じている。
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インド論理学研究
巻: 1 ページ: 41-58
Logic in Earliest Classical India, edited by Brendan S.Gillon.(Papers of the 12^<th> World Sanskrit Conference)
巻: 10-2 ページ: 183-190