本研究課題は4年間で以下の三つのテキストの研究を並行して行うことを目的とする。 (1)『大いなる帰滅の物語』(MSK)の日本語への翻訳と注を完成させる。(2)『菩薩の過去世物語の如意の蔓草』(BAKL)の校訂と翻訳を行う。(3)『善説の大きな宝の過去世物語の花鬘』(SMRAM)の校訂と翻訳を行う。 さて第二年度の平成20年度は、研究計画どおりに研究が進み順調に発表がなされた。それは次のとおりである。-上記の(1)に関する仕事:MSKの第5章第1節を翻訳し、さらにパーリ文『ローカパンニャッティ』の対応する部分を翻訳した。これは『哲学年報』68輯に発表された。翻訳に対して、詳細な仏教の宇宙論に関する解説が注として付けられた。さらに印度学宗教学会『論集』第34号にMSKと弥勒下生経との関係を論じた論文が発表された(この34号は発行日が2007年12月31日になっているが、実際には2008年10月に発行された)。-上記の(2)に関する仕事:BAKLの第55章『一切施[王]』と第91章『シビ[王]の善説』と第92章『マイトラカンヤカ』の校訂ならびに翻訳を行い、『南アジア古典学』第3号に発表した。この三つの章の梵文と蔵文の校訂と翻訳に加えて、『カルマ・シャタカ』の第125話「シビ王」と126話「シビ王」の蔵文テキストの全文の和訳もあわせて行ったため、この論文は99頁におよぶ分量となった。-上記の(3)に関する仕事:SMRAMの第23章ヤショーミトラの校訂テキストを扱った論文原稿が完成した(2009年7月発行の『南アジア古典学』第4号に掲載される)。また第30章ジャーティアンダ・プレーティカの校訂も予定通り終わった。その校訂文はアヴァダーナ・シャタカの対応する第48章の翻訳が完成するのを待って、『南アジア古典学』のその次の号に掲載する予定である。本年度は校訂作業をさらに第31章シュレーシュティナームの途中まで進めることが出来た。
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