【1.チベット訳校訂作業に関する研究実績】 『金光明経』に含まれる諸章のうち、「散脂鬼神品(薬叉大将サンジュニャーヤ品第十九Samjnayaparivarta)」に対して、Peking版(部分的に入手済み。デジタル、アーカイブ化途中)、Narthang版(平成19年度補助金によって入手済み。デジタル、アーカイブ化済み)、Stog Palace写本(入手済み。デジタル、アーカイブ化済み)、Tokyo写本(部分的に入手済み。デジタル、アーカイブ化途中)という、チベット訳校訂作業に際しての必須資料を中心に、Ndbel[1944]とも比較校合を行いながら校訂作業を完了した。その結果、1940年代以降停滞していた『金光明経』のテクスト研究に進展をもたらした。 【2.〈仮説〉の検証を通した、インド宗教文化理解・インド仏教実像理解に関する研究実績】 『金光明経』のうち「四天王品」、「弁才天女品」、「吉祥天女品」、「堅牢地神品」に後続し、それら〈諸天に関する五品〉の末尾に位置する「散脂鬼神品」に焦点を当てつつ、〈五品〉全体の特徴を明らかにすることで、すでに提示した、インド宗教文化理解・インド仏教実像理解に関わる〈仮説〉の検証を行った。その結果、「『金光明経」の編纂者は〈五品〉を通じ、主として王族階級の人々を領民共々仏教に誘引し、伝法や修行という自らの目的を達成するため、彼らから経済的援助を得ようと試みた」という結論を得たことで、〈仮説〉の有効性が-層確かめられ、その結果、インド宗教文化・インド仏教の実像理解に資することができた。
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