本研究は、インド大乗仏教において成立した中観思想がチベットにおいて思想史上新たな発展をみせた「大中観(dbu ma chen po)」の思想的基盤とその展開について解明することである。具体的には、チョナン派のトルプパ・シェーラプ・ギェルツェン(1292-1361)、同派のターラナータ・クンガニンポ(1575-1640)の著書を解読することを通して、「大中観」の思想が成立する基盤並びにその思想がチベット仏教に与えた影響を分析することにより、チベット仏教思想史における「大中観」思想の意味を明らかにすることである。
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