研究計画の2年目である平成20年度は、前年度の基礎研究に基づき、 (1) ムスタンおよび中央チベットにおけるシャーキャ・チョクデンの著作の木版印刷計画と (2) ロウォ・ケンチェンの著作の木版印刷計画 について、ゴル寺やムスタン関係の歴史資料を基に、印刷プロジェクトにおける施主・出版責任者・主任校閲者等のプロジェクト構成員、並びに印刷プロジェクトの作業工程・印刷施設等を検討した。以上の調査結果を分析するため、今回の調査研究では、特に歴史文献に記述されたムスタン及び中央チベットにおけるサキャ派の宗教活動の観点から、シャーキャ・チョクデンとロウォ・ケンチェンの著作の木版印刷研究を進めた。 今回の調査研究を通じて、ムスタン及び中央チベットにおけるサキャ派の宗教活動という観点から、シャーキャ・チョクデンとロウォ・ケンチェンの著作の木版計画を捉えることの重要性が明らかになった。また、チベットにおける木版印刷が、モンゴル・中国を始めとする周辺諸国からどのような文化的影響を受けて成立したかを考察するための基礎資料を蒐集することができた。以上の研究成果は、2008年11月の第18回仏教文化学会で口頭発表を行うと共に、『東アジア文化交渉研究』(第2号、2009年3月刊行)に論文発表した。
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