研究概要 |
19世紀末にローマ字版がパーリ文献協会から出版されながら, その後の研究も翻訳もほとんど無かった『マハーボーディヴァンサ』(大菩提樹史) について, その解読の助けとなる中世シンハラ語による資料を収集し, その梗概を把握して学会や論文で発表した.また, これらの資料のうち特にパーリ語本文の解読にもっとも重要と考えられたシンハラ語版『シーハラ・ボーディヴァンサ』(14世紀) の第1章本文をユニコード・フォントによりデジタル化してHP上に公開するとともに, パーリ語本文の解読を試みた結果, 中世期スリランカのパーリ文献が, 失われたシーハラ・アッタカターの伝統を受け継いでいると見られる独自の内容を含むことと, また時に顕著な大乗仏教的な要素が見られることを確認した.研究の結果, これまでその評価がなおざりにされていた, 当該文献の価値の再確認とスリランカ上座仏教研究史上での位置付けを行い, パーリ文献研究における中世シンハラ資料の価値と有用性を確認することができた.
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