研究概要 |
平成20年度は、前年度に引き続き、クロスオーバー研究によって内観前後のNK細胞活性の測定、及び3種類の市販の心理テストへの回答をお願いした。本研究は、内観療法的介入を用いることによって、宗教をもつ人があらためて神仏と自らの関係を見つめなおし、結果的に感謝の気持ちを高めることによって、心身にどのような変化が生じるのかを明らかにすることにある。1ヶ月の内観療法的介入前後で、NK細胞活性に関しては優位な変化を認めることが出来なかった。一方心理テストはPOMS、WHOSUBI, WHOQOLを使用した。このうち「生活の質」を測定するWHOQOLでは、直接「生活の質を質問する問い」(Q1)および下位項目の「精神性/宗教/信条」の質問(Q6)で、内観療法的介入前後で統計学的に有意な改善が認められた(各々p=0.005,p=0.0147)。非介入時にはこうした項目では有意差が得られなかった(各々p=0.260, p=0.651)。「主観的幸福感」を評価するWHOSUBIでは、「心の健康感」と「心の疲労度」を測定する。非介入時には「心の健康度」の改善を認めなかったが(p=0.516)、内観療法的介入によって、「心の健康度」が改善した(p=0.002)。さらに「心の健康度」の7つの下位尺度の中では「人生に対する前向きな気持ち」が優位に改善した(p=0.008.非介入時にはp=0.409)。気分を測定するPOMSでは、6つの気分尺度のうち、「思考力低下・当惑」を示す尺度が介入後に有意に改善した(p=0.012、非介入時はp=0.712)。こうした結果は、内観療法的介入が少なくとも「主観的幸福感」の「心の健康度」や「QOL」, 「人生に対する前向きな気持ち」をはじめとする心理的効果をもたらすことを明らかにしている。
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