本年度は、パキスタン・イスラム共和国の政情不安により、計画していたいパキスタン南部の調査研究の実行が叶わなかったために、急遽インド共和国のデリー大学図書館をはじめ、インド考古学局の関連する資料調査、並びにインドにおける仏教研究者との情報交流を行った。特に、デリー大学仏教学部の準教授であるシン博士やインドにおける仏教史・仏教美術史研究の第一人者であるローケシュー・チャンドラ博士との情報交換は、非常に有意義であった。 一方、国内における仏教の衰亡研究に関しては、従来の群馬県の廃仏運動の研究をさらに拡大し、他地域にも拡大した。この問題に関しては、仏教の衰亡研究のみならず「宗教とナショナリズム」あるいは近代国家と伝統宗教というような新たなテーマヘの研究拡大を計画している。 以上のことを前提に、本研究プロジェクトの方法論的な骨子でもある「宗教の興亡と政治」に関して、方法論的の確立や仮説の提示を行うための、基礎資料としての東南アジアや東アジアにおける仏教を含めた宗教と政治あるいはナショナリズムの関係の考察に不可欠な基礎資料の収集に関しても行った。 その一方で、収集文献の整理と分析に関しても、成果を得ることができた。特に、報告者は「仏教の衰亡」というテーマを歴史的な事例研究とするのみならず、現在問題分析にも援用したいと考えており、そのために現在社会における国際紛争に関しても分析を行い、その成果を一般啓蒙書であるが『世界の宗教問題の基礎』(青春出版)また、この成果は『仏教の衰亡に何を学ぶか』(相国寺教学委員会)『ブッダとムハンマド』(サンガ)として出版した。また本研究の成果の一部は韓国語(ハングル語)版の『インド仏教はなぜ亡んだか』(韓国、東国大学出版2008年6月)に反映させた。
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