平成21年度は、研究の更なる展開とその成果の発表と普及の両面で、国内外において次のような活動を行った。まず外国においては、2009年12月28-22日の4日間、マレーシアのクチンにおいて開かれた第3回居士仏教世界会議において、インド仏教と日本仏教の比較研究について発表したが、その際にインド仏教の衰亡にける研究成果を強調して発表した。その結果、韓国と台湾の研究者により、共同研究の依頼があり、2010年3月9・10日には、韓国東国大学教授・金洪星教授と同大学において共同研究をおこなった。さらに中国社会科学院東方研究所研究員となり、孫晶教授との学術交流も深め、中国の末期インド仏教研究への研究協力をおこなった。 一方国内においては、拙著『癒しと鎮めと日本の宗教』(北樹出版社、2009年5月)を出版し、成果の一部を盛り込んだ。また、佼成出版社より出版予定の「講座仏教」(シリーズ)のうち「インドとイスラム教」の部分を担当し、研究成果を大幅に盛り込んだ。その他、『宗教学研究』361-1において「インド宗教における道徳と倫理」(313-337)を執筆した。 ただし、政情不安と体調不良が重なり、パキスタンの現地調査は実行できなかった。調査対象地区が危険地域であり、今年も様子を見つつ文献等の研究に随時置き換えつつ、研究成果の充実を図りたい。その意味で、現在インド仏教の研究は、セデュールカーストの諮問委員会の仏教代表者との関係を築けたことが大きかった。平成22年度は、現在の仏教徒の動向についても研究したい。また、2010年6月5-8日においては、台湾の華梵大学主催の国際会議においてインド仏教の衰亡に関する成果発表を行う予定である。
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