本プロジェクトの最終年度である本年度は、過去3年間の研究成果の更なる深化と同時に、その成果の発表にも力を注いだ。まず、研究の深化に関しては、インドにおける仏教研究のリーダー的存在であるデリー大学仏教学部ナライイン・シン博士と交流し、また、バングラデーシュにおける末期仏教の遺跡調査を実施しまた、その文献研究のための基礎資料の収集を行った。一方、インド仏教の衰亡研究の更なる展開のために以下の点についても、研究の展開のために、新しい課題に着手した。つまり、(1) 現在南アジア(インドを中心に、バングラデーシュ、スリランカなど)における仏教の現状研究、(2) インド中世における宗教の興亡に関しての研究である。さらに、これら大きなテーマを総合化できる理論の構築の可能性についても研究を開始した。また、本テーマの比較宗教学的なアプローチの一貫として、他地域における廃仏現象について、比較研究を行ってきたが、本年度は、日本近代の廃仏運動の原点の一つである鹿児島における廃仏史について、鹿児島市と大隅半島の周辺について調査を行った。 一方、本プロジェクトの成果に関する発表は、先ず、2010年6月台湾大学を会場として行われた第3回『東方人文思想国際学術検討会』(華梵大学・台湾大学主催、中国社会科学院共催)において、成果を発表した[速報は『在家仏教』(在家仏教協会)2010年9月号46-57ページ]に掲載した。また、中国社会科学院(北京)の孫晶教授との共同研究も成果を結んだが、2011年3月末に予定されていた共同会議は、日本の大災害のために中止せざるを得なかった。 しかし、報告者の論文が孫教授によって中国語訳され、中国社会科学院の機関誌に掲載されることとなっている。その他『仏教入門』(なつめ書房)の監修・著作など一般書の執筆により研究成果を公開した。
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