本研究は、現在沖縄で進行しつつある、本土的な文化慣習が普及する形の変化について、ただ本土的な文化が移入されるというのではなく、本土的な文化が沖縄的な変容を加えられながら取り入れられてゆく、いわば「本土化」を「沖縄化」の相互作用として捉えようとしてきた。その相互作用を明らかにするために昨年まで、沖縄からの移民の多い大阪市大正区を選定し、移住してきた人々の葬儀や死者慣行、民間宗教家(巫者)、戦争体験などについて、自らの文化をいかに「本土化」させ適用させていったかについて、文字資料の収集と聞き取り調査を行ってきた。 本年度は最終年度であるので、8月にまとめのための調査を大阪で行った。特に移住者のうち本土で神懸かり体験をし、真言宗や修験本宗などの宗教団体で修行の後、資格を取つて、本土のみならず沖縄にもどっても宗教活動を行う事例について聞き取りを行うことができた。3月には、大阪での調査結果の確認をする目的で、沖縄において聞き取り調査と本土移民についての文献資料の収集調査を行った。 現在、成果報告書としてこれまでの調査内容をまとめる作業を行いつつある。沖縄で現在普及しつつある本土式の墓地の原型が、大阪生駒霊園の沖縄からの移住者の墓地に見いだされる例などのように、これまでの調査によって、葬儀し・死者慣行、民間宗教者、戦争死者祭祀の3側面において、沖縄から本土への移住者が自文化を本土に適応させる目的で改良し、その改良されたものが沖縄に再移入されるという一つのパターンが見いだされた。
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