本研究の目的は、アジア・太平洋戦争終戦後、伝統教団の改革運動と平和運動を実践した仏教社会運動が、戦後日本社会の形成にどのように寄与したのかを実証的に調査・研究するとともに、2001年9月11日のニューヨーク同時多発テロ事件以降の新たな宗教者平和運動が、現代日本社会で果たしている公共的役割を実証的に調査・研究することである。 一次資料の収集を中心とした文献調査、現代の宗教者平和運動の集会への参与観察、宗教者平和運動諸団体の関係者への聞き取り調査を通じて、戦後日本における仏教社会運動(とくに宗教者平和運動)は日本社会の公共的領域において活動がなされ、一定の公共的役割を果たしてきたことを明らかにした。 とりわけ、9・11以降の日本社会における宗教者平和運動は、平和運動セクターの一環として活動し、宗教的に意味づけされた日本国憲法九条を掲げながら、さまざまな立場の宗教者や労働者、市民たちとのネットワーク関係の中で公共的役割を果たしていることが明らかとなった。
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