2008年はアメリカ大統領選挙の年であり、1980年代以来、大統領選挙に大きな影響を与えてきた「宗教保守」(福音派)の動向と影響力が注目された。アメリカ合衆国におけるプロテスタント保守派である「福音派」は、ここ数年、従来の中絶反対、同性愛婚反対だけではなく、地球温暖化問題、アフリカにおけるエイズ問題、世界各地における人権侵害の問題など、これまでになかったような主張を行うようになってきた。このような福音派の多様化が大統領選挙の行方にどのように影響を与えるかが注目された。 近年のアメリカにおける福音派のこのような「多様性」の実態を明らかにするために、2007年9月と11月、2008年11月に現地調査を行った。現地調査はインタビューを中心に行い、インタビューはテープ起こしを行い、今後の研究のための基礎資料を作成した。 1980年代から近年まで、アメリカの内政において大きな影響力を保持してきた「宗教右派」は、急激に影響力を減少させてきている。その背景には、あまりにも戦闘的で排他的なあり方に対して、世論が批判的になったからであろう。しかし、福音派の勢力は依然として衰えていない。オバマ政権の行動を今のところ慎重に注目していると思われる
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